身体がでかいだけの「でくのぼう」だったことから、
部下の侍だけでなく、領民からも「のぼう様」と呼ばれた成田長親。
どんなときでもマイペースだった彼が、
天下統一を目前にした豊臣秀吉の大軍勢に喧嘩を売った理由がコレ。
その心中を作者は地の文で解説する。
「強き者が強きを呼んで果てしなく強さを増していく一方で、
弱き者は際限なく虐げられ、踏みつけにされ、
一片の誇りを持つことさえも許されない。
小才の利く者だけがくるくると回る頭でうまく立ち回り、
人がましい顔で幅をきかす。
ならば、無能で、人が良く、愚直なだけが取り柄の者は、
踏み台となったまま死ねということか」
自らは何も持たない長親だからこそわかる、弱者の痛みと怒り。
その優しき心は、当代随一の戦力でもついに破ることができなかった。
和田竜著『のぼうの城』より